小学生低学年(1〜2年生)の守備の成長段階について(2)

2020/12/28

その他 考え方

t f B! P L

ベースとなる能力と影響する要素

前回、低学年でベースとなる能力(幼児期に成長する部分)、その能力に影響する要素を確認しました。

具体的には、能力については、以下の4点

1.体格


2.体力(持久力、瞬発力と筋力)


3.神経系の発達(コーディネーション能力 7つ)

  1. リズム能力:動くタイミングに関わること
  2. バランス能力:バランスを保つために調整すること
  3. 変換能力:動きを切り替えること
  4. 反応能力:外部からの影響に素早く動くこと
  5. 連結能力:身体の各部位を連動させて動くこと
  6. 定位能力:他のものとの位置関係を認識すること
  7. 識別能力:道具を操作すること(サッカーのボールを蹴る・ボールタッチをするといった能力もこの識別能力です。)


4.コミュニケーション能力(遊ぶ中で得られるコミュニケーションや判断、自らの工夫)


能力に影響する要素についても、以下の4点
  1. 月齢
  2. 外遊びをしていた期間・頻度
  3. ボール遊びをしていた期間・頻度
  4. サッカーをしている期間・頻度


ただ、守備では直接ボールを扱うわけではないので、攻撃に比べてサッカーをしている期間の影響は少ない、ということでした。


守備の成長段階


具体的に守備の成長段階を考えていきます。

成長段階とは、自分以外の環境をどこまで認識しているか、です。サッカーは一人でできるスポーツではありません。常に自分以外の環境の影響を受けています。

守る上で、その環境をどこまで認識できているか、実際におきる現象は何か、何の能力が影響しているか(支配的なのか) 整理していきます。


守備の成長段階




1.ボールをとりたい/とにかくボールに向かう


関係性

ボールと自分

おきる現象

とにかくボールに向かっていきます。
相手がボールを保持しているか、ルーズボールになっているか関係なく、ボールを奪う・ボールに触れることだけに集中します。
相手の状態は関係ありませんので、ボールの動きだけについていき、届くと思えば足をだします。

能力との関係

体力が関係します。
ボールに対して瞬発的に動き出す力、追いかけ回す持久力 が必要です。



2.ボールを奪えるチャンスを見つける


関係性

ボール・相手と自分

おきる現象

ボールと相手に向かっていきます。
相手がボール保持しているか、相手とボールの距離はどうか、相手は蹴ろうとしているか 等、相手とボールの状態によって動きが変わります

チャンスがないと思えば、無理にボールを奪いに行きません。

(ボールと相手の間に)身体をいれるといった動きも選択できるようになります。



能力との関係

体力に加え、神経系の発達(リズム能力、バランス能力、変換能力、反応能力、連結能力)が必要になります。

またコミュニケーション能力のうち、判断に関する能力も重要です。奪えるチャンスなのかどうか、判断が必要になります。いわゆる相手との駆け引き。

判断するための段階(スペインでよく言われるもの)を考えますと。

認知・分析・決定 実行(PAD+E)

ここで、分析するためのインプット(元ネタ)は何かというと、認知で確認した相手の状態だけではありません自分の経験や知識、自分自身の能力(自分ならどうするか)も、踏まえて分析されます。

低学年(1〜2年生)では、経験や知識もあまりありません。また、経験や知識があっても、瞬時の分析・決定に活かされるには、十分身につける必要があります。
一方で、自分自身の能力については、身についたものなので、活かされる可能性が高いです。

つまり、「ボールを奪えるチャンスを見つける」、この段階までくると、自分自身の能力が、分析・決定に大きく関わってきます。
言い方をかえると、自分ができることが多いと相手を分析するのに有利ということになります。


3.何を守るか 意識する

自分とゴールを意識する段階

関係性

守るゴール(スペース)・相手と自分


おきる現象

守るものに優先順位がある。
ボールを奪う、ゴールに近づかせない・シュートを打たせない、中にいれさせない、中にパスをさせないなど、何を守るのか優先順位を決めることができる。
仮に優先順位を間違えても/成功しなくても、次には、ただボールに向かわない。次に何をするか判断できる。


能力との関係

体力に加え、神経系の発達(定位能力)が必要になります。
さらにコミュニケーション能力のうち、判断する力も重要です。

認知・分析・決定 実行(PAD+E)

認知において、定位能力を生かしてゴールの場所やスペースの場所を動きながら把握する必要があります。




4.次に何が起きるか予想し準備する

ボールに直接関わらず、次の展開を意識しボールが遠くにあっても、守備ができる。

関係性

(遠くにある)ボール・複数の相手・ゴール(スペース)・(味方)と自分


おきる現象

警戒と予測。ただ下がっているのではなく、次の動きを狙う動き
パスカット、ファーストタッチを奪う、カバーリング、シュートコースに入る など



能力との関係

体力にくわえ、神経系の発達(定位能力)が必要になります。
さらにコミュニケーション能力のうち、判断する力も重要です。


認知・分析・決定 実行(PAD+E)


認知の対象が増えています。具体的には、遠くにあるボール、複数の相手・味方が対象に増えています。これらを定位能力を活かして位置関係を把握する必要があります。

また、認知の対象が増えている分、分析もより複雑になります。相手や味方の動向をふまえて、次の動きを分析する必要があります。そのためには、身体の向けや目線、動きの速さ(止まっているのか、歩いているのか、走っているのか)といった要素も分析対象になります。




5.仲間とゴールを守る


関係性

事前に共有しているグループやチームでの約束ごと

(遠くにある)ボール・複数の相手・ゴール(スペース)・(味方)と自分



おきる現象

味方の意図を汲んだ守備位置や動き
各ゾーンやレーンに応じた守備の仕方の変更


能力との関係

これまでにでてきた体力や神経系の発達、コミュニケーション能力(コミュニケーションや判断力、試行錯誤や工夫)全般が必要になってきます。
練習時からのコミュニケーションが試合でも発揮されることになります。



指導する立場で大事なこと


この成長段階は、放っておいても自然と成長するものではありません。
というのも、1つ1つの能力は徐々に身につくかもしれません。しかし、成長段階は、それらを組み合わせた内容になっています。そのため、自然に身につけることは困難です。

個々の能力が幼児期に身につけていれば、早い時期に成長段階を上げていくことができるかもしれません。また、個々の能力が身についていなくても、練習していく中で身につけ、成長段階を上げていくこともできるでしょう。


つまり、指導者は段階を上げるためのコーチング必要です。
具体的には、能力が身についているか見極め・育成すること、次の段階を示し選手自身の意欲を刺激し、チャレンジさせることが大切です。

さらに、各段階は単純ではありません。
各段階で必要になるテクニックアクションや個人戦術のアクションがあります。
そのために、何を認知するか・分析する要素は何かといったことを示し、各段階の中で十分に多様性をもてるようにする必要があります。



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自己紹介

1975年生まれ。2014年からサッカーコーチ活動を開始。ボランティアでスポーツ少年団にて活動中。
息子3人サッカー選手。それぞれ、スポーツ少年団、部活、クラブチーム、サッカースクールで活動。サッカー選手の保護者の目、サッカーコーチの目で子どもたちや息子の成長を見ています。

指導者D 級ライセンス
審判4級ライセンス
スポーツ少年団認定員

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経済産業大臣登録 中小企業診断士
ネットワークスペシャリスト
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